妻が家計の貯金を管理してた…

家族構成

イラスト_男性40代

 

(相談者)
夫A氏(40代)
会社員

 

 

イラスト_女性30代

 

※別居中
妻Bさん(30代)
専業主婦

 

イラスト_男の子

※母と同居
5歳(長男)
幼稚園児

 

イラスト_男の子

※母と同居
3歳(次男)

 

 

俺の人生、
いったいどうなってしまうんだ!?

 

 

俺は現在、妻と別居中だ。
先週末、妻が子どもを連れて実家に帰ってしまったのだ。

 

 

俺は、別居なんてしたくなかった。
不倫も暴力も、何もしていない。
最近夫婦喧嘩が絶えなかったが、それが耐えられなかったそうだ。

 

 

俺は、必死に謝った。
何度も何度も謝った。
声が出なくなるまで謝った。

 

 

だが、もう遅かった。
妻は、限界以上に不満が溜まっていた。
妻の中では、別居は完全に決めていたのだ。

 

 

こんな形で、妻と離れ離れになんて。
もちろん、子どもたちと離れ離れになるのも辛い。

 

 

別居生活が始まって俺は精神的にかなり追い詰められてしまった。
だが、別居直後に妻が求めてきた婚姻費用が、さらに俺をどん底に突き落とした。

 

 

 

世の中には、婚姻費用制度というモノがある。
例え別居中でも、婚姻関係にある限り収入の高い側(主に夫)は妻に生活費を支払うのだ。

 

 

婚姻費用の金額は、算定表で決めることが多い。
俺はドキドキしながら、算定表から金額を求めてみた。

 

婚姻費用計算の前提条件
  • 私(夫)の年収:600万円
  • 妻の年収:専業主婦のため無し
  • 子ども:2人(5歳と3歳)

 

この条件から、算定表を金額を求めてみた。
その金額を見て、俺はビックリした!

 

 

ええっ!?
毎月約17万円!?
こんなにも払わないといけないのか!?

 

 

俺は、年収600万円。
月収として12ヶ月480万円と賞与120万円。
毎月の手取りは、約33万円だ。

 

 

俺は車のローンを毎月5万円支払っている。
この時点で、手残りは28万円だ。

 

 

ここから婚姻費用を、毎月17万円支払う、とする。
手残りは、たったの11万円。

 

 

おいおい。
東京都内で11万円で生活しろってのか。
こんなの絶対無理だろ…。

 

 

今の家は、家賃7万円だ。
家賃を支払ったら、手残りは4万円。
4万円で、光熱費・通信使・食費・通信費などをやりくりできるわけない。

 

 

婚姻費用を支払うと、完全に赤字だ。
こんなの生活、続けられるわけがない!

 

 

別居は地獄だ。
妻にも子どもにも会えない。
そんな俺を、婚姻費用制度がさらに追い詰める。
現代の地獄生活の始まりだ。

 

 

何か良い方法は無いか!?

 

 

そういえば、家庭の貯金は妻が管理していた。
家を出るときに、家庭の貯金の通帳なども持って出て行った。
家庭の貯金は、確か500万円くらいはあったはずだ。

 

 

妻は、いつでもそのお金は使える状況だ。
ということは、今は手元のお金にはそれほど困ってないはずだ。

 

 

だったら、俺からの婚姻費用は必要あるのか!?
家庭の貯金とはいえ、手元にお金があるんだからそれを使えばいい。

 

 

少なくとも、私が17万円もの婚姻費用を支払うと、毎月赤字は確定だ。
貯金は妻に管理してもらってたので、手元の貯金などほとんどない。

 

 

貯金は使って良いので、婚姻費用は勘弁してほしい。
このまま毎月17万円も支払っていると、いつかは破綻してしまう。

 

 

別に、妻へのお金を払わないわけではない。
俺が婚姻費用を払うのは現実的ではないので、管理している貯金から必要な額を使っていいという提案だ。

 

 

なんとか妻に交渉してみよう。
だが、もし交渉が上手く行かなかったら。
そうなったら、裁判で訴えるしかない。
だが、裁判をしてもうまく行くだろうか…。

 

 

俺は、悩みに悩んだ末、
弁護士に相談に行くことにした。

この事例の争点

家庭の管理は、夫婦生活においては非常に重要です。
多くの家庭では、毎月の家計が赤字にならないように支出を調整します。
そして、将来の住宅購入やゆとりのある老後生活のために貯金もします。

 

 

この時、家庭の管理を夫婦どちらにするかは、、結婚初期に決まる場合が多いです。
共働きなら夫婦別々の財布にすることもありますが、多くの家庭では妻が財布のひもを握っています。

 

 

夫婦生活が正常であれば、妻が家計をすることで夫は仕事に集中できます。
妻は、家計簿などをつけつることで毎月の家庭の収支を管理すると共に、適切に節約と貯金を心がけてくれるのです。

 

 

しかし、妻が家庭の貯金を持ったまた別居してしまうと、夫は大変な状態に陥ります。
この事例では、妻は500万円という大金を使える立場のまま別居しました。夫としては、その貯金は自分のモノでもあるが、自由に使えない状態です。

 

 

別居すると、妻は当然、夫に婚姻費用を請求するでしょう。
婚姻費用を請求された夫は、ほぼ生活が苦しくなります。
その際、「まずは管理しているお金で生活費を支払って欲しい」と思うのは理解できます。

 

 

夫がこの状況で婚姻費用を支払うことに抵抗を感じるのは、理解できなくはありません。
相手が十分なお金を管理しているのに対して、自らがだけが金銭的プレッシャーを受けているように感じる心情は理解できます。

 

 

この事例の場合、妻は管理している家庭の貯金を使えば当面の生活には困りません。
そして、別居中に家庭のお金を使うことを夫はしぶしぶ同意しています。

 

 

この様な場合では、夫は婚姻費用の支払いを逃れることはできるのでしょうか?

 

 

では、この事例に似た過去の判例を紹介します。

 

判例の紹介

判例@

東京高等裁判所

平成15年12月26日

未公表

別居となり、妻が夫に婚姻費用の支払いを請求した。だが、家庭の貯金を妻が管理していることで、夫は支払いを拒否した。

 

東京高裁は、
・妻の管理する貯金は財産分与の協議・審判・訴訟で決められるべき
・その保有する貯金を先に婚姻費用に充てる根拠は無い
として、貯金を婚姻費用の代替とすることを否定した。

 

判例A

仙台高等裁判所

平成16年2月25日

家裁月報56巻7号116項

夫(義務者)に定期収入がある場合、相手が家庭の貯金を持っていようとも、まずは夫の収入から婚姻費用を分担すべきで、貯金は財産分与で清算すべき、との判断をした。

 

結論

妻が家庭の貯金を管理していた場合、別居状態になると妻は金銭的には余裕があります。
一方、家庭の貯金を妻に任せっきりにしていた夫は、手元の貯金が少ないことと、請求される婚姻費用で金銭的なプレッシャーに襲われます。

 

 

その様な状況では、多くの夫が『家庭貯金を使っていいから婚姻費用は払いたくない』と思っても仕方ないでしょう。

 

 

しかし、妻が管理するのはあくまで今まで貯めてきた夫婦共通の貯金です。その性質から、貯金は財産分与で生産するというのは、合理的な判断です。

 

 

それに対して、婚姻費用は、現時点で夫の得る収入から一定額を、妻子への生活費にするという性格を持っています。そのため、現時点での夫婦の年収・子どもの数から求め、それは今までの貯金とは切り離して考えることになるのです。

 

 

過去の判例でも、貯金を管理している側かどうかに関係なく、婚姻費用はその時点での年収を基に決めています。そして、夫は毎月の収入から支払わなければならないのです。

 

 

例え妻が家庭の貯金を持っていても、そのことは婚姻費用には影響しません。妻の管理している貯金は、財産分与で話し合う内容なのです。

 

 

したがって、この事例の場合、夫は妻に婚姻費用を支払わなければなりません。
毎月の支出が赤字になるなら、家賃の安い家に住むなり、賞与から補填するなどして、なんとか支払っていかなければならないのです。

 

まとめ!

別居中の妻が家庭の貯金を持っていても、夫は婚姻費用を支払わなければならない!