第11回 離婚相談
婚姻費用・養育費を下げるために会社を辞めても良い!?

 

離婚カウンセラーの
ミライです。


 

婚姻費用は、お互いの年収と子どもの数・年齢を基に決めます。
その際、夫も妻も自分が有利にするために、『自分の年収は高く』『相手の年収は低く』設定したいと考えています。

 

相手の年収をコントロールできませんが、自分の年収は多少調整できます。

 

今回の相談者は、婚姻費用の金額を下げるために夫が会社を辞めて困っている奥さまです。

 

あなたの悩みはどれですか?

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≪相談の背景≫
婚姻費用の金額を下げるために夫が会社を辞めた…

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家族構成

イラスト_男性40代

 

 

夫A氏(40代)
会社員

 

 

イラスト_女性40代

 

(相談者)※別居中
妻Bさん(40代)
派遣社員

 

イラスト_成人男性

※母と同居
16歳(長男)
高校生

 

夫は、典型的な亭主関白だった。

 

 

家では自分の思い通りでなければ気が済まない。
少しでも気にくわないことがあると不機嫌になる。

 

 

私は、毎日の食事は夫の気分に合わせて作っていた。
夫の部屋の掃除は毎日していた。
夫の洗濯物は特にキレイに畳むようにしていた。

 

 

気難しい夫の気分を、できるだけ害さないようにしていた。
だが、夫の亭主関白っぷりは、年を取るごとにひどくなっていった。

 

女性73_悩み2-1

 

そんな夫の態度に我慢できなくなったのは、息子が高校に進学してからだった。

 

 

息子は猛烈勉強の末に県内でも進学校に進学した。
しかし、周りは優秀な人ばかりで成績がついていけなくなった。
高校2年時には、40人クラスで下から2,3番目だった。

 

 

息子の成績が下がると、夫は息子を怒鳴りつけていた。
そして、息子をコテンパンに叱った後は、必ず妻である私も叱ってきた。

 

 

暴力こそなかったが、一方的な叱責は数十分にも及んだ。
モラハラ(精神的虐待)というより、暴言と呼ぶのがふさわしい程だ。

 

 


「お前の教育がいけないからだ」
「さっさと今の塾を辞めて他に行かせろ」
「これ以上成績が下がったら、どうなるかわかっているのか」

 

 

息子が止めに入ってきても、夫の罵声は止まらない。
家族では誰も夫のことを止められなかった。
いつしか、家族の会話は無くなっていった。

 

 

その頃から、私は夫に耐えられないと感じていた。
まともに夫の顔を見ることができなかった。
もはや、一緒の空気を吸うのも耐えられなかった。

 

 

私は、息子が高校2年に進学するタイミングで、妻は家を出た。
事前に相談した息子は、迷うことなく私に付いてきた。

 

 

私は、夫に手紙だけを残しておいた。

 

 


「今まで、ありがとうございました。
実家に帰ることにしました」

 

女性73_悩み7-1

 

夫が怒り狂ったのは言うまでにない。
私の携帯には電話とメールの着信の嵐。

 

 

別居開始直後は、一日のほとんどを電源OFFで過ごしていた。
それでも、留守電にはこの世のモノとは思えない罵詈雑言(ばりぞうごん)が残されていた。

 

 

私は離婚を考えていたので、バツイチの友人に相談した。

 

バツイチの友人は、離婚に向けての相談に親身に乗ってくれた。
そして、生活費を確保するために婚姻費用を請求することを勧めてきた。

 

 

婚姻費用?
なにそれ?

 

 

私にとって、婚姻費用とは初めて聞く言葉だった。

 

 

婚姻関係にある夫婦は、例え別居していても収入の多い方(夫)が低い側(妻)に生活費を支払う義務があるという。
婚姻費用の金額は、お互いの年収と子どもの数・年齢で決まるらしい。

 

 

私は、さっそく婚姻費用の金額を計算することにした。

 

婚姻費用の金額
  • 夫の前年度の年収、700万円
  • 妻の前年度の年収、350万円
  • 16歳の高校生の息子が1人

 

 

この条件から決まる婚姻費用は、10〜12万円。
さっそく夫に婚姻費用として毎月11万円を請求した。

 

 

私が婚姻費用を請求すると、夫は支払いを拒否した。
それでも私は、「婚姻費用は法律で決められた義務であり、払わなければ給与の差し押さえもできる」と説明した。

 

 

翌月以降、夫はしぶしぶ婚姻費用の支払いを始めた。

 

 

 

婚姻費用の支払いが始まって3ヶ月ほど経った頃だった。
突然、夫からメールが来た。

 

 


「会社を辞めてやった。今はアルバイトで月収17万、年収は約200万円ほどだ。年収が下がったのだから、婚姻費用も変わってくるはずだ」

 

 

どうやら、夫は年収700万円で計算する婚姻費用を支払うのがイヤで、会社を辞めてしまったのだ!そして、敢えて年収が低いアルバイトをしているというのだ。

 

 

婚姻費用は、お互いの年収によって決まる。
自分が有利にするために、『自分の年収は高く』『相手の年収は低く』設定すれば良い。

 

 

夫は、年収700万円の仕事を辞めた。
夫は、自らの年収を下げてまで婚姻費用をできるだけ払いたくなかったのだ。

 

 

だが、そんなことが認められるのだろうか!?

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≪離婚相談の内容≫
わざと年収を下げても婚姻費用・養育費の計算には認められない!

背景の要約

夫A氏からの暴言から逃れるため、妻Bさんは息子と一緒に家を出た。
夫に婚姻費用を請求したが、夫は金額を下げるために年収700万円の会社を退職した。
妻Bさんは、意図的に年収を下げた行動で婚姻費用の低下は認めたくないと考えている。

<<戻って相談の背景を見る

 

 

旦那さまは、当初は婚姻費用を支払ってたが、最近会社を辞めてしまったのですよね。


 

 

 

 

 

夫が退職した直後、『会社を辞めてやった』『年収が下がったのだから、婚姻費用も変わってくるはずだ』と連絡がありました。
婚姻費用を下げるために、意図的に会社を辞めて年収を下げたと思われます。


 

 

旦那さんは、とても思い切った行動に出ましたね!
婚姻費用を定めるとき、自らの年収が低い方が金額が少なくなると分かっていても、実際に退職までしてしまう人はなかなかいないのですが…。


 

 

 

 

 

夫と一緒に暮らしていたので、夫の考えそうなことは分かります。

 

退職して年収が下がったので、改めて婚姻費用を決めたいと思っているはずです。そして、新しい婚姻費用が定まれば、また元の給与水準の仕事に転職しようと考えているのでしょう。

 

夫は、昔から行動力だけはありましたので…。


 

 

なるほど。
退職までしてしまうなんて、すごいですね。


 

 

 

 

 

婚姻費用はどうなりそうですかね?

 

夫の今の仕事の年収200万円程度のアルバイトだと、毎月万円となり大幅低下となってしまいます。しかし、意図的に退職して婚姻費用を下げるなんて認めたくありません。


 

 

確かに、婚姻費用は双方の年収と子どもの数・年齢を基に、算定表から求めます。意図的に年収を低下させて婚姻費用を下げるということは、考え得る方法ではあります。

 

ただ、結論から言いますと、旦那さんの主張は認められない可能性があります。

 

似た状況での過去の判例を紹介します。


判例の紹介

判例@

大阪高等裁判所

平成22年3月3日決定

家裁月報62巻11号96頁

夫は、調停成立時には歯科医師で病院勤務しており、婚姻費用は月6万円で合意していた。

 

しかしその後、夫は病院を退職して大学の研究生となった。その結果、夫の年収は低下がしたため婚姻費用を1万にするよう減額を求めた。

 

しかし裁判所は、自らの意思で低い収入となったことを指摘して婚姻費用の減額は認めなかった。

判例A

福岡家庭裁判所

平成18年1月18日決定

家裁月報58巻8号80頁

会社員の夫は、養育費の強制執行を逃れる目的で会社を退職した。
退職したために年収がゼロとなり養育費の免除を申し立てた。

 

しかし、裁判所は勤務を続けていれば得られた収入に基づいて養育費を算定した。

 
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今後について

 

過去の判例によると、意図的に年収を下げることで婚姻費用や養育費の金額を引き下げようとしても、それは無効と判断されています。判例では、年収が下がる前の金額を基に婚姻費用や養育費が算出されているのです。

 

旦那さまは、自らの年収を下げることで婚姻費用を下げようとしました。判例の様に年収の低下が認められなければ、婚姻費用は下がる前のままです。

 

その結果、生活はとても苦しくなってしまいます。旦那さまは、会社を辞めずにいた方が良かったと考えられます。


 

 

 

 

 

結局、退職したことが全くの無駄になるという訳ですね。

 

ふと思ったのですが、夫は年収を下げてアルバイト生活(年収200万円)になるよりも、ずっと同じ会社(年収700万円)だった方が、自由に使えるお金が多かったのではないでしょうか?


 

 

奥さまのおっしゃる通りです。

 

旦那さまの年収700万円のままだったら、年間428万円が自由に使えるお金となります。


 

年収700万円のままの家計収支

年収700万円の手取りは、年間約560万円。
婚姻費用は、年間約132万円。
使えるお金は、年間約428万円。

 

 

一方、旦那さまは年収200万円のアルバイトになりました。
年収200万円だと、自由に使えるお金は年間で万円しかないのです。


 

年収200万円に下がった家計収支

年収200万円の年間手取りは180万円。
婚姻費用は年間約50万円。
使えるお金は、年間約130万円。
(※年収低下は認められない場合、婚姻費用は132万円)

 

 

表を見ると、年収は700万の時の方が使えるお金は多いです。
結局、意図的に婚姻費用を下げようとすると、結果的に自らを苦しめているだけになってしまいます。


 

※表

 

 

なるほど。
夫は、目の前の事しか見えてなくて、結果的に無駄なことをしてしまったわけですね。


 

 

ただ、Bさんが気にしなければならないことが一つ増えてしまいました。


 

 

えっ!?
それは何ですか?


 

 

旦那さまの勤務先が分からなくなったのは、潜在的なリスクです。

 

婚姻費用の支払いが止まると、旦那さまの勤務先に連絡して夫の給与差し止めをして、婚姻費用を強制的に支払いわせることができます。しかし、それは職場が分かっている場合のみ。

 

旦那さまは退職した場合、給与差し押さえをするためには、旦那さまの職場を把握する必要があるのです。


 

 

 

 

 

えっ!?
それは大変です!

 

どうやったら、別居中の夫の職場を調べることができるのですか?
弁護士に相談したら探してくれないのですか?
調停や裁判になったら、裁判所が調べてくれたりしないのですか?


 

 

旦那さまの勤務先がどこかは、弁護士や裁判所は探してくれません。
あくまで、Bさん自身で探す必要があるのです。

 

旦那さまの勤務先を把握する方法はいくつかあります。


 

 

どうすれば…。


 

 

ひとつは、自然の会話の中で聞き出すことです。
源泉徴収票や給与明細を見せてもらったりすれば、職場の把握はできるでしょう。

 

もうひとつは、探偵・興信所に依頼して、旦那さまの職場を割り出してもらうことです。費用はかかりますが、長期的な視点で婚姻費用や養育費を考えれば、できるだけ早めに把握しておくことは重要です。


 

 

 

 

 

なるほど!
ありがとうございます!

 

まずは、なんとか婚姻費用の交渉をしてみたいと思います。
夫には、年収を下げる行動は無駄だから、元の職場に復帰するか、依然と同じ年収の仕事を始める様に言ってみます。


 

 

頑張って下さい!
応援しています!


 

まとめ

意図的に年収を下げても、婚姻費用や養育費で年収減としての計算は認められない!

 

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