性格の不一致の相談事例

  • 夫A氏は、40代後半の会社員。
  • 妻Bさんは、40代前半でパート社員。(相談者)
  • 子どもは男の子が2人で、それぞれ中学生と小学生。

 

夫A氏は小さい製造業の会社に努めていた。
30代半ばで転職して、もうかれこれ10年以上勤務していた。

 

夫は生産管理の業務を行っていた。
製品の生産計画や原材料の調達などを管理しているのだ。
アイデアを生かすような業務ではなく、だいたい同じような業務を繰り返す日々だ。
昨今の業界の流れでは、そのうち機械(AI)に取って替わられると言われている。

 

夫の所属する生産管理の部署は、出世街道から外れた人が集められている。
いわゆる、社内では窓際の部署だ。
夫は真面目な性格ではあるが、頑固なので上司から評価されなかったのだ。

 

夫の会社の売上の半分以上は、ある大手企業の工場への納品で成り立っていた。その大手企業の工場は、普段の生活に身近な家電を作っており、家電部門の売上が夫の会社の業績にも直結していた。

 

2015年の夏頃、家電業界全体が不況に陥った。
シャープやパナソニックといった大企業でさえ経営危機が囁かれた。

 

最終製品が世間に一巡したこと、中国や台湾の企業が安い価格で家電商品の販売を開始したことなど、大手企業が消費者のニーズに見誤った大型投資をしたことなど、複数の要因が原因だった。

 

夫の会社は高い技術を持っていたが、取引先である大手企業が海外の企業に競争力で負けていった。そのため、大手企業と共に夫の会社の売上も大きく落ち込んだ。

 

会社の危機に夫の会社はリストラを行うことになった。その中で、窓際族の夫はリストラの筆頭候補になってしまった。最初は抵抗したものの、会社は準備万端で退職勧告をしてきているので反論は通りそうになかった。夫は仕方なく、退職金を受け取って会社を去った。

 

リストラ後、当初はハローワークに通うなどして再就職活動に専念していた。会社を選ばず50社以上もの会社に履歴書を送った。いくつかの会社には面接に行った。

 

だが、世間の中高年に対する風当たりは思ったより厳しかった。夫A氏が応募するのは、どれも中小企業や零細企業で高望みはしていなかった。だが、夫の様にだれでもできるような生産管理の仕事をしていた人は即戦力にならない。結局、ほとんどの企業が採用を見送った。

 

夫は半年間ほどハローワークに通った。だが、再就職先がなかなか決まらなかったので、ついに夫A氏は家でゴロゴロするようになった。リストラされただけでなく、再就職も決まらずに投げやりになっていた。

 

だが、妻は毎日が不安で仕方なかった。
妻Bさんが昨年から始めたパートの給料は、たかが知れている。
家族4人の生活費を考えると、焼け石に水だ。

 

夫のリストラで退職金が入ったとは言え、今は貯金を切り崩して生活している。それに、住宅ローンはあと15年程度残っている。このまま無職なら2年以内に無一文になってしまう。

 

さたに、今後は2人の子どもが高校や大学に行くことになるとお金がかかる。さらに、どちらか病気になってお金が必要になるような事態も起こるかもしれない。そう考えたら、貯金が減っていく生活は耐えられなかった。

 

だが、夫は今日も家でゴロゴロしている。妻から見て、夫A氏は真面目で家族想いだ。だが、妻として夫が無職であることは気が気でなかった。

 

さらに、女性は男性よりも世間体を気にする。夫A氏は、自分がリストラされて無職になってしまったから家にいても仕方ないと思っていた。だが、妻Bさんは昼間からずっと家の中や近所をブラブラしている夫の姿が近所で噂になってしまうことに懸念を感じていた。

 

その様なお互いの考えの違いのため、家では口論が絶えなくなった。妻は夫の行動すべてが目に触るようになり、事あるごとに小言を言うようになった。その度に、夫は妻に言い返す。そうやって、毎日何度も言い争うようになった。

 

子どもたちは、両方とも10歳を超えているので、夫婦の口論は理解していた。だが、それを聞いた子供たちは黙っているしかなかった。

 

その間も、妻Bさんは次第に不安と不満が溜まっていった。このまま貯金を取り崩す生活では、いつかは生活に行き詰まる。そうなると、高校や大学に通わせることができない。それ以前に塾に行かせることができなければ、良い高校や良い大学なんて合格できるはずがない。

 

妻は生活への不安が限界を迎え、妻の気持ちは諦めへと変わっていった。そしてその不満は大きくなっていた。

 

事件が起きたのは、ある日の夕食後だった。
夫A氏は、妻がビールを買ってきていないという理由で妻を強く叱責した。

 

夫A氏
「おい、なんでビールが無いんだ?今すぐ買ってこい」

 

夫A氏にとっては、夕食後にビールを飲みながらテレビで野球を楽しみであった。だが、不満が溜まっていた妻はその言葉で何かが吹っ切れた。そして、一人静かに決断するのであった。

 

もう、離婚しか無い。
妻Bさんは、この時結婚生活を過去のものにした。

 

今の財産の半分をいただいて、きっぱり別れよう。
私がしっかり働いて、子どもたちを大きく育てて行こう。

 

だが、妻Bさんには不安があった。

 

夫は浮気や不倫をしたわけではない。
また、暴力などをしたわけでもない。

 

明らかな離婚原因が無いため、夫が離婚を拒否したら離婚は認められないのではないか。
夫と離婚したいが、離婚できないかもしれない。

 

妻Bさんの離婚への決意は固い。
だが、離婚できるか不安な日々を過ごしている。

この事例の争点

サラリーマンは、誰しもがリストラに直面する可能性を秘めています。リストラという形で強制的に行われる場合や、早期退職などのように雇用者が能動的にリストラ計画に応じる場合もあります。

 

ただ、40歳以上で会社を辞めると、その後の再就職は非常に難しいです。大企業はもちろん、中小企業や零細企業でさえもなかなか雇ってもらえないのが現実です。簡単に見つかるだろうと思っていた人も、何通履歴書を送って何社面接に行っても再就職先が決まらないとなると、就職活動を止めてしまう人が出てきます。

 

この事例では、当初は再就職活動をしていましたが、うまくいかないことから夫は毎日家でゴロゴロ過ごすようになりました。妻が、就職活動をしない夫を見て生活に不安を覚えるのは仕方ない事です。まだ家のローンが15年程度も残っていることや、2人の子どもたちを大学に行かせたいという気持ち考えると、妻Bさんの不安は当然のことでしょう。

 

では、この様な状況で妻Bさんは夫と離婚可能でしょうか。

 

協議離婚であればお互いが合意さえできれば離婚可能ですが、もし夫が協議や調停で離婚を拒否した場合、最終的には裁判で勝たなければなりません。

 

この事例では、夫は家で仕事もせずにゴロゴロしているだけですが、不倫や暴力などは無いため決定的な離婚原因はなさそうに見えます。働かないという理由で、夫と離婚できるのでしょうか。

 

では、この事例に似た過去の判例を紹介します。

 

判例の紹介

判例@

東京高裁

昭和54年3月27日判決

判例タイムズ384号155頁

夫はマージャンなどで生計を立てることもあったが、薬剤師である妻へ依存した生活を送っていた。夫は、労働できない理由はなかったが、妻の再三の要請を無視して怠惰な生活を続けていた。
そんな夫に対して妻は不信感が募り、離婚を請求した。夫は妻との離婚に反対していたが、裁判所は『婚姻関係を継続し難い重大な事由』として離婚を認めた。

 

判例A

東京高裁

昭和59年5月30日判決

判例タイムズ532号249頁

夫は、いくつかの会社を転々としたり、会社を設立したものの業績低迷で安易に借金を重ねて妻や妻の父に頼ろうとした。特に、妻の父が保証人となっていたために保有する土地を売却せざるを得なくなった際に、夫が売却にあたって妻の父の納税を免れたことを恩着せがましくしたこともあった。

 

夫はそのような著しくけじめを欠く生活態度に終始し、潰瘍性大腸炎のために心身ともに打撃を受けていた妻に対する思いやりも欠いていた。夫婦関係破綻の責任は夫にあるとして、婚姻の継続し難い重大な事由に該当するとして離婚を認めた。

 

結論

過去の判例では、怠惰な性格、勤労意欲の欠如、生活能力欠如などを理由として離婚が認められた例があります。どれも、『婚姻を継続し難い重大な事由』として離婚が認められているのです。

 

夫婦には、協力して生活する義務があります。夫が働かずに家でゴロゴロしているのは、夫婦として生活に協力しているとは到底言えず、その怠惰なことは離婚事由になるのです。

 

この事例の夫婦は、夫は外で働いて、妻は家事・育児が主な役割でした。だが、たとえリストラされたとは言え、ずっと家でゴロゴロしていていいという訳ではありません。しかも、貯金を取り崩す生活をしており、妻の不安は計り知れないでしょう。

 

働かずに怠惰な夫とは離婚できる!