元夫が子どもに勝手に会いに来るなんて…

家族構成

イラスト_男性40代

 

 

元夫A氏(40代)
会社員

 

 

イラスト_女性30代

 

(相談者)※離婚済
元妻Bさん(30代)
パート社員

 

イラスト_女の子

※母が監護中
7歳(長女)
小学生

 

夫と離婚して1年が経った。
今は、娘と二人暮らししている。

 

 

夫との離婚原因は、性格の不一致だ。
結婚した時は幸せの絶頂だった。
だが、10年も結婚生活をしていると、いろいろ溝ができてきた。

 

 

結婚生活の最後の1年は、毎日喧嘩していた。
今から考えると、原因はどれも小さな事ばかりだった。
だが、これ以上、精神的に耐えられなかった。

 

離婚は、私から切り出した。
元夫も離婚を考えている様だった。

 

 

離婚には、お互いすぐに合意した。
だが、離婚条件はかなり揉めた。
話し合いは調停にもつれ込み、裁判所には10回も通うことになった。

 

 

だが、なんとか満足いく条件で調停離婚した。
もちろん、最も重要視していた親権は獲得できた。

 

 

夫と離婚後、娘との生活は幸せそのものだ。
仕事と育児の両立は大変だが、娘の笑顔を見れば疲れなどすぐに吹き飛ぶ。

 

 

そんな娘だが、月に1度楽しみにしているイベントがある。
それは、元夫と面会交流だ。

 

 

娘も小学生となり、家に父親がいないことは理解できている。
だが、子ども心としては、実の父親に会うことはとても楽しみなのだろう。

 

 

正直、私としては大事な娘を元夫に会わせたくなかった。
だが、裁判所の調停委員は『子どもの心の成長ため』として面会交流を強く進めてきた。

 

 

当初、面会交流に戸惑いはあった。
だが、久しぶりに父親に会った娘の幸せそうな顔を見ると、母親として面会交流を認めざるを得なかった。

 

 

娘がこんなに笑顔になるなんて、いい意味で期待を裏切られた。
こんな風に、元夫がこれからもスムーズな面会交流を続けてくれたら。

 

 

だが、それは叶わぬ望みだった。

 

 

 

ある日、学校から帰宅した娘が困った顔をしていた。
私は、心配して理由を訪ねてみた。

 

 


「今日ね、お父さんが家まで送ってくれたの」

 

 

えっ!?

 

 

私は、言葉が出なかった。
今日は面会交流の日ではない。

 

 

監護親である私は、今日元夫と娘が会うなんて聞いていない。
元夫が、私の許可なく娘に勝手に会いに来たのだ。

 

 

娘は、月に一回の元夫との面会交流は楽しみにしている。
だが、会うはずのない場所・タイミングで、急に父が現れたので戸惑った様だった。

 

 

私は、すぐさま元夫に連絡した。

 

 

元夫へのメール
「今日、学校から家まで娘を送ってくれたそうですが、面会交流以外では会いに来ないで欲しい。急に父親が表れたことで、娘が困惑しています。」

 

 

元夫からに連絡は無かった。

 

 

元夫は、次の日も、その次の日も娘に会いにやってきた。
見計らったかの様に、学校の前で待ち伏せていた。
今日などは、すぐ家に送るのではなく、ドライブで連れまわしたというのだ。

 

 

家に帰ってきた娘は、私を見ると急に泣き出した。

 

 

お父さんが、学校に現れた困っている。
お母さんに言うべきかどうかで困っている。

 

 

お父さんが、怖い…。

 

 

私は、その夜も夫にメールした。

 

 

面会交流以外で、娘に会わないで欲しい。
娘がとても困っている。
娘が怖がってもいる。

 

 

だが、元夫からは「親だから会うのは当然だ」との返信だった。

 

 

ホント、どうしようもない男!
どうして私たちの気持ちを考えてくれないの!?

 

 

元夫は、面会交流で娘に会っている。
だが、学校の前で待ち伏せたり、そこからドライブで連れまわすのは約束違反だ。

 

 

元夫が、面会交流以外で現れることに、娘は戸惑っている。
あれほど面会交流で父親と会て笑顔になっていた娘が、父親を怖がっている。

 

 

事実、娘は学校帰りにビクビクするようになってしまった
今日も元夫が娘に会いに来ていないか気が気でないらしい。

 

 

元夫の行動は、私たちの生活の安定を脅かしている。
娘は最近、父親の事を思うたびに少しおびえた表情になっている。
面会交流の約束を破っている元夫に娘を会わせるのは、今はやめた方が良いのでは。

 

 

私は、夫との面会交流の停止ができるかどうか、弁護士に相談に行くことにした。

この事例の争点

子どもがいる場合、離婚するときには親権者を決めなければなりません。
この時、現実的には母親が親権者・監護者となって子どもを育てていくことが多いです。
父親が親権を取得するのは、難しいと考えておくべきです。

 

 

しかし、親権者になれなかったとしても、子どもに会う機会として面会交流が設定されることがあります。現在、裁判所は面会交流を強く奨めてきます。

 

 

面会交流は、双方の合意があればどのような条件でも設定可能です。多くの場合は月1〜2回と設定することが多いです。

 

 

ただし、非監護親の中には、もっと子どもに会いたいと思う人もいます。我が子が大切に思うあまり、そういった気持ちになるのは親としては正常です。

 

 

しかし、非監護親が勝手に子どもに会いに行ったりすると、子どもも監護親(主に母親)はとても戸惑います。

 

 

子どもとしては

  • なぜ、お父さんは会いにきたのだろう?
  • なぜ、僕(私)がここにいると知っているのだろう?
  • 一緒に暮らすお母さんには、言わない方が良いのかな?

など、非常に戸惑います。

 

 

また、監護親の私としても、

  • なんで約束以外で会いに来ているのか?
  • 子どもに気に入られて、私から引き離すつもりか?
  • 力づくで連れ去ったりしないだろうか?

など、迷惑や恐怖を感じます。

 

 

一度でも、待ち伏せなどで勝手に会いに来ると、その後も意識してしまいます。
例え非監護親に悪意はなくとも、子どもと監護親にとっては、普段の安定した生活が脅かされてしまうのです。

 

 

この事例では、非監護親が面会交流の決まり以外で、子どもに会いに来ました。
しかも、監護親である母親から『勝手に会いに来ないで欲しい』と伝えても、拒否してまた会いに来ています。

 

 

この場合、監護親である母親Bさんと子どもは、安定した生活を乱された状態となってしまいました。この様な状況で面会交流を行って父親に会っても、もはや逆効果でしょう。

 

 

今、母親は面会交流を中止したいと考えていますが、認められるでしょうか。

 

 

では、この事例に似た過去の判例を紹介します。

 

判例の紹介

判例@

福岡高等裁判所

平成15年11月28日

家裁月報56巻8号50項

非監護親である父親が、調停で決まった面会交流の取り決めに違反し自分の都合に合わせて不規則に面会していた。そのため、親権者である母親は、調停条項以外での面会交流を行うことをやめて欲しいと裁判所に申し立てた。

 

しかし父は、子どもをを待ち伏せて車に乗せて学校まで送るなどしたため、面会交流の条件の変更を求めた。

 

母は、父が約束以外でも面会交流を求めるのは自分の教育方針に従わせようとするためで、面会交流が認められると親権者である母親による適切な監護・教育に影響があり子どもの精神的安定に害がある、と主張した。

 

福岡高裁は母親の主張を認め、当分の間は面会交流を認めないとする判決を出した。

 

判例A

横浜家庭裁判所

平成18年3月9日

家裁月報58巻11号71項

非監護親の母親が、調停で決められた条件を守らずに勝手に子どもと面会交流した。

 

監護親の父は、
母親が子どもを待ち伏せしたり、無断で会いに行ったり子どもを連れまわして、逮捕されるなどした
子どもの心情や生活状況に配慮した適切な面会交流の実施を期待することは困難
として、面会交流の取りやめを申し立てた。

 

横浜家裁は、監護親の父の主張を認めて、面会交流を全面的に禁止した。

 

結論

多くの人は、面会交流を『親が子どもに会う権利』だと思っていると思います。確かにその意味もありますが、『子どもが親に会う権利』でもあります。

 

 

子どもは、両方の親から愛されていると感じることで、心の健全な成長が期待できるのです。そのため、調停や裁判においては、面会交流を行うことは強く推奨されます。

 

 

しかし、面会交流を長期にわたってスムーズに行うためには、離婚時に決めた約束を守らなければ十分な効果が得られません。

 

 

この事例では、非監護親である父親が子どもの通う学校前で待ち伏せするなどして勝手に子どもに会いに行っています。子どもとしては、会うはずのない父親が急に現れては、当然戸惑います。

 

 

この様に、面会交流という機会が設けられているにも関わらず勝手に会いに来ると、子どもも監護親も安定的な生活を脅かされたとして戸惑います。

 

 

この様なことが続くと、監護親による子育てに支障をきたすと共に、急に非監護親が会いに来たことで子どもの精神的安定も脅かされます。

 

 

そのため、子どもと監護親の精神的に安定した生活のためにも、その様な行動を取る父親に会うのは、当然恐怖を感じます。その様な場合、裁判所は面会交流の一時停止や全面禁止という判断を下すことがあるのです。

 

まとめ

非監護親が勝手に子どもに会いに来たら、面会交流の停止は認められる!