『婚姻を継続し難い事由』の正しい知識とは!?

  • 夫A氏は、50代後半の会社員。
  • 妻Bさんは、50代前半のパート勤務。(相談者)
  • 子どもは、2人いるが共に社会人。

 

妻Bさんが、離婚を考えだして1年が経った。

 

昨年、2人の子供は社会人となって家を出た。
そして、20数年ぶりに夫婦だけの2人暮らしになった。

 

だが、二人きりの生活になってから、夫との関係はギクシャクし始めた。
何かある度に、言い争いが始まった。
原因は記憶にも残らない様な些細な事だ。
だが、言い争いは日に日に激しくなっていった。

 

最初、妻Bさんは言い返していた。
しかし、ある時から反論することをやめた。

 

妻Bさんが何か言うと、夫A氏はその5倍以上で怒鳴り返してきた。
いつしか、夫A氏から終わらない暴言を浴びせられる様になった。

 

最初は受け流していた妻Bさんだった。
だが、そういった日々を繰り返すことで精神的に参ってきた。
もはや、一緒に生活することが辛くなってきた。

 

そして、これ以上耐えられなくなり離婚を考えるようになった。

 

妻Bさんは意を決して弁護士に相談した。

 

離婚するにはどうしたら良いか。
慰謝料はどのくらい取れそうか。

 

妻Bさんは、夫A氏のこれまでの言動から、離婚はすぐにでも認められると思っていた。
もちろん、慰謝料もそれなりに受け取れると思っていた。

 

しかし、弁護士の回答は期待を裏切るものだった。

 

不倫や暴力といった明確な証拠が無い。
むしろ、調停委員や裁判官にはただの夫婦喧嘩と思われるかもしれない。

 

例え妻Bさんが、夫A氏から暴言を受けていると主張しても、夫が暴言を認めることはないだろう。かといって、夫の暴言を録音はしていないし、いつどのようなことを言われたかの記録などもしていない。

 

そうなると離婚は認められないだろう。
もちろん、慰謝料請求なんて無理だ。

 

妻Bさんにとって、これ以上夫と同居生活を送ることは精神的に不可能だ。

 

今すぐ離婚できないのなら仕方がない。
結局、将来的な離婚成立を期待して、まずは別居を始めることを決意した。

婚姻を継続しがたい重大な事由とは

何らかの原因で、夫婦の信頼関係が破綻していて回復の見込みがない状態の時、離婚は認められる可能性があります。具体的な原因として、暴力、暴言、精神的暴力(モラハラ)、セックスレス、宗教活動、長期の別居などです。

 

ただ、これらの離婚原因うちで明確な証拠として認められやすいのは、暴力、長期の別居などの目に見える証拠がある場合です。

 

暴力は診断書が証拠になります。
別居は、家賃や公共料金の支払いなどが証拠となります。
ただ、それ以外は相当の証拠を揃えなければ離婚が認められません。

 

また、協議や調停で最も多い離婚理由である『性格の不一致』は、この『婚姻を継続し難い重大な事由』であることが多いです。ただし、相手が離婚に合意すれば離婚できますが、相手が離婚に応じない場合は、裁判で『婚姻を継続し難い』ことを裁判官に認めてもらう必要があります。

 

ただし、裁判においては決定的な証拠が無い限り裁判官は離婚を認めません。
そのため、片方が『性格の不一致』で離婚したいと主張しても、離婚成立が簡単には認められにくい離婚事由だと言えます。

 

婚姻関係の破綻とはどういう状態か

そもそも、婚姻関係の破綻とはどういった状態でしょうか。

 

多くの人は、

  • 「相手に対してもはや愛情が無くなった」
  • 「相手に対する気持ちが冷え切っている」
  • 「普段の会話が皆無となっている」

をと考えるでしょう。

 

しかし、離婚裁判の現場では、そのような主張だけではとても破綻しているとは認められません。それらを裏付けるための、明確な記録や証拠が必要なのです。

 

暴力の場合は、喧嘩の延長ではなくて一方的で継続的であることが重要です。
別居の場合は、別居期間はどのくらいでその間の関係性はどうであったかが重要です。
精神的暴力(モラハラ)の場合は、発言内容や頻度が重要です。

 

そして、それらが離婚事由として認められるかどうかは、記録や証拠によって判断されます。

 

また、夫婦関係の回復可能性も重要です。

 

日々の暴力・暴言などが一時的なものではなくて、長期にわたって繰り返し行われていると、夫婦としての信頼関係の回復が難しいと判断される必要があります。

 

このように、『婚姻を継続しがたい重大な事由』とは明確な基準が無く、裁判官の裁量に依るところが非常に大きいのです。

 

夫婦関係が破綻していると認められるための準備と証拠

婚姻関係が破綻しているという明確な基準は無い以上、裁判官に離婚を認めてもらうためには小さな証拠や客観的事実を積み上げて説明していくしかありません。

 

裁判官や調停委員に説明する際、暴力や別居のような明確な証拠が有れば主張が認められやすいです。しかし、決定的な証拠を揃えられない場合もあります。また、精神的暴力(モラハラ)やセックスレスなどは、記録を取らなければ何も残りません。

 

その様な時は、相手から被害を受けた際の内容を全て記録しておくようにしましょう。日時、具体的内容を日誌やスマートフォンのメモなどに記録しておけば、一つ一つの効果は小さくても、それが数十回〜数百回と積み重なれば説得力を持ちます。

 

では、どのような証拠や事実を準備すれば離婚が認められるのでしょうか。

 

@できるだけ多くの証拠を準備する

離婚裁判はもちろん、離婚調停においても証拠は重要です。裁判は証拠が無ければ主張が認められません。また、離婚調停は主張をぶつけ合う場ですが、双方の意見が対立した場合、証拠がある方が調停委員の信頼を得ることができます。

 

婚姻を継続しがたい重大な事由は様々な局面が考えられますが、各パターンで証拠が認められるのは次の通りです。

 

継続的な暴力

暴力の場合、傷跡の写真や医師の診断書を用意しておけば有力な証拠となります。また、その時の状況を説明するためにも、メモなどで記録しておくべきです。

 

暴力があった場合は警察に通報することで記録に残ります。その記録があれば、将来的に調停や裁判において有力な材料となります。

 

ただし、程度にもよりますが一度の暴力では離婚は認められません。暴力を原因とするためには、一方的で継続的に暴力を振るわれていた証拠が必要があります。

 

モラハラ(精神的暴力)

相手が一方的に暴言を吐かれている声を録音しておけば有力な証拠となります。録音する機器は、ICレコーダーやスマートフォンのアプリなどがあります。

 

また、録音が取れない場合でも、相手にいつ何を言われたかを適宜記録しておけば証拠となり得ます。

 

セックスレス(性交渉の一方的な拒否)

夫婦は、性交渉をすることが普通だと考えられています。ただ、何らかの事情により一方が継続的に性交渉を拒否する場合があります。合理的な理由が無く性交渉を拒否し続けることは、離婚事由となります。

 

セックスレスの証拠としては、断られた日時・回数・理由を記録することになります。あなたが行為を求めた日と、相手が断った理由を記録していくのです。あなたが性行為することを求めた日の数に対して、明確な理由もなく断る日が多ければ、証拠として強くなります。

 

宗教活動にハマる

一方が過度に宗教活動に没頭してしまい婚姻関係が破綻に至った場合、離婚が認められる可能性があります。

 

もちろん、常識的な範囲内での活動であれば問題ありません。ただ、宗教活動に過度にのめりこむなどして仕事や家事を放棄したり、夫婦で貯めた貯金の多くを勝手に寄付してしまっては、夫婦の信頼関係が維持できていない可能性があります。

 

そのような場合は、相手の宗教活動にかけている時間や、寄付した金額などを記録しておきましょう。一つ一つは証拠としては微力ですが積もり積もれば強い証拠となり得ます。

 

長期の別居(3年以上)

別居していることは、客観的に見ても夫婦関係が破綻していると言えます。ただし、別居して数カ月では、感情的になって出て行っただけかもしれないと見なされて、まだ修復の余地はあると判断されるでしょう。

 

別居で離婚が認めてもらうには、最低でも3年程度は必要です。
ただ逆に考えると、3年程度完全別居すれば離婚が認められるのです。

 

そう考えると、離婚を決意した瞬間に別居開始するのは非常に効果的です。
3年後には離婚が認められるのであれば、早めに離婚を開始するのは合理的な判断です。
決定的な証拠が無いが離婚したい場合は、適当な理由を作って早く離婚してしまうのが王道的方法です。

 

もちろん、明確な理由がなく家を出ると、夫婦の共同生活義務を放棄したとして悪意の遺棄に問われる可能性があります。そのため、何かしら明確な理由を示した上で別居開始するべきです。

 

A友人や親族の証言を得る

もし友人や親族があなたの主張に沿う証言をした場合、あなたの主張は大きな説得力を持ちます。裁判で証言するということは、わざわざ裁判所に出向いて宣誓までするのですから、証言する側も相当の覚悟が必要です。

 

ただし、証言内容は5W1Hがはっきりとしているのは基本として、できるだけ具体的な説明が求められます。

 

B何度も夫婦関係の修復を試みたが無理だったことを示す

婚姻関係の破綻が認められるには、十分に修復に努めたことを示さなければなりません。離婚を持ち掛けた直後や突然別居を開始して日が経たないうちに、離婚調停・離婚裁判を起こした場合、裁判官や調停委員はまだ話し合いが不十分で修復の余地があると考えます。

 

それに、いくら別居が離婚への早道と言っても、具体的な理由も無く別居したり離婚を請求すると、『一方的に離婚したいから別居した』と判断されて、裁判官や調停委員に悪い印象も与えてしまいます。

 

離婚したい場合、夫婦として信頼関係の修復を図ったが結果として別居や離婚を選択せざるを得なかった、と説明できるようにすべきです。

 

Cすでに別居している

相手と完全別居状態だと、離婚が認められるための強い材料です。別居しているということは、今現在夫婦間の交流が無いことを意味しているからです。

 

相手が離婚に拒否していてなかなか離婚成立しなくても、3年程度完全別居すれば夫婦関係の破綻が認められて結果的に離婚できるのです。そこまでの期間が経っていなくても、別居は夫婦関係の破綻を裏付ける強い事実なのです。

 

まとめ

『婚姻関係を継続し難い事由』は、明確な基準というモノがなく、また、決定的な証拠が得られない場合もあるので、なかなか離婚が認められにくい傾向があります。そのため、離婚したい側は、どんなに細かい事でも記録を積み上げることが重要です。

 

また、どうしても離婚したい場合は、理由を明確にしたうえで早めに別居することを検討すべきです。証拠不足で離婚が認められなくとも、3年程度以上の別居の実績を作れば結果として離婚が認められるのです。