不倫の相談事例

  • 夫A氏は、40代後半の会社員。
  • 妻Bさんは、40代前半の会社員。(相談者)
  • 子どもは1人で、中学生の娘。

 

妻Bさんは、最近気持ちがモヤモヤしている。
事の発端は半年前に遡る。

 

夫Aさんの不倫が発覚したのだ。
1年に渡って、会社の元後輩Cさんと男女の仲にあった。

 

不倫相手Cさんは1年前の転職の際、会社では送別会が開かれた。
夫A氏と不倫相手Cさんは、その送別会で話をして大変盛り上がった。
送別会で意気投合した夫A氏と不倫相手Cさんは、後日2人で飲みに行くようになった。

 

不倫相手Cさんは、背が低くてカワイイ系。
夫の大好きなタイプだ。
2人が男女の仲になるのに時間はかからなかった。

 

夫の帰宅時間が遅くなりだしたのもその頃だ。
早くに出世街道から外れて窓際族なのに、忙しいとか言い出したのだ。
それからというもの、週末の金曜は決まって夜中に帰ってくるようになった。

 

夫に不倫相手がいると気付いたのは女の勘だった。

 

ある日、帰宅した夫のスーツから甘い香りがした。
妻Bさんは一瞬で女の気配を感じとった。
最近の夫の行動を考えると、夫には女がいる。

 

夫が寝ている間に、夫のカバンを調べようとした。
すると、夫のスマホが光った。
誰かからラインが届いたようだ。

 

待ち受け画面にメッセージが表示される。
それを見たBさんは、固まってしまった。

 

Cさん
「Aさん、今日はありがとう!
今日もエッチ良かったよ。
このままアパホテルに泊っていくね」

 

妻Bさんは、自分のスマホでそのメッセージ画面を撮影した。

 

 

 

翌日の昼過ぎ。

 

夫A氏は、パジャマのままリビングで正座させられている。
不倫を疑われた夫A氏は、最初ははぐらかそうとしていた。
しかし、なぜか妻Bさんが妙に詳しいのだ。

 

夫A氏は、妻からの問い詰めに窮していた。

 

なぜ、昨晩女性と会っていることを知っている!?
なぜ、その女性の名前がCということも知っている!?
なぜ、アパホテルに行ったことを知っている!?
なぜだ?なぜだ?なぜだ?なぜなんだ!?

 

夫A氏は冷汗が止まらなかった。
追い詰められたA氏は、白状するしかなかった。

 

観念した夫A氏は、妻の質問に正直に答えるしかなかった。

 

不倫相手Cさんはいったい誰なのか。
いつから2人で会うようになったのか。
どこに行ったりしたのか。
スキンシップや性行為はあったのか。

 

全てを白状した夫A氏は抜け殻になった。
そして妻Bさんに必死に謝った。
Bさんは、呆れるしかなかった。

 

 

 

1週間後の週末。
A氏とBさんは家族で都内の高級レストランにいた。
普段は行かないようなところだ。

 

なぜ、そんなところへ来ているのか。
妻や娘の誕生日でもない。
結婚記念日でも、クリスマスでもない。

 

妻への償いのためだ。

 

夫がCさんとの不倫を白状した後、妻Bさんは激怒した。
妻Bさんの怒りは3日経っても収まらなかった。

 

夫A氏は、離婚は回避したいと思った。
妻Bさんに「何でもするから許してほしい」と懇願した。

 

最初、妻Bさんは離婚を考えていた。
だが、夫は不倫したとはいえ、普段は妻Bさんにも娘にも優しい。暴力や暴言も無い。
むしろ、生活費や子どもの教育を考えると、離婚は現実的ではない。

 

夫A氏が必死に謝る姿を見て、妻Bさんは夫の不倫を許そうと思った。
その代わり、高級レストランとブランドのバックを要求し、夫A氏は自分の小遣いからそれらをプレゼントしたのだった。

 

全ては、一件落着…のはずだった。

 

 

 

夫の不倫発覚から1か月が経とうとしていた。
だが、妻Bさんは気持ちのモヤモヤが消えなかった。

 

夫の謝罪と反省は本物だと感じた。

 

夫の謝罪する姿を見て、今回だけは不倫を許すことにした。
高級レストランにも連れて行ってもらったし、ブランドのバッグも買ってもらった。
それで、今回の事は全て忘れるつもりだった。

 

しかし、時間が経ってもモヤモヤが解消されない。
むしろ、日に日に高まってくるのを感じる。

 

夫は、他の女と肉体関係を持っていた。
夫は、家庭を見捨てて女遊びをしていた。
夫は、完全に私を裏切っていた。

 

妻Bさんのモヤモヤは収まらなくなった。
そして、今になって離婚を決意して弁護士に相談しにいった。

この事例の争点

不倫は立派な離婚事由です。離婚の原因としての不倫(不貞行為)は上位にランキングされます。

 

不倫を原因として離婚するためには、不倫した側が自白するか、不倫された側が裁判で決定的な証拠を示さなければなりません。

 

夫A氏は、会社の元後輩のCさんとの不倫関係を認めました。さらに、妻Bさんは、不倫相手Cさんが夫A氏に送った肉体関係を認めるラインを証拠として持っています。この状態だと、不倫は裁判で認められるでしょう。

 

ただ、妻Bさんは一度夫の不倫を完全に許しています。夫A氏からの謝罪と高級レストランでの食事、そしてブランドバッグを購入してもらったことで、夫の謝罪を受けいれたのです。

 

妻Bさんが離婚を決意したのは、夫の謝罪を受け入れた後なのです。
この事例では、一度許した不倫を原因として離婚ができるのかが争点となっています。

 

では、この事例に似た過去の判例を紹介します。

 

判例の紹介

判例@

東京高裁

平成4年12月24日判決

判事1446号65頁

妻の不貞行為が発覚したが、妻は謝罪して夫は完全に許しました。
その後4〜5ヶ月は平穏に暮らしていたが、夫は妻がまた不貞行為をしていると疑って、束縛などをして妻を攻め続けました。

 

その結果、妻は夫に対して嫌悪感を持つようになり、子どもを連れて家を出て、妻から夫へ離婚を請求しました。

 

夫は、「妻は不倫をしていた有責配偶者なので離婚請求はできない」と主張しましたが、東京高裁は、「いったん宥恕(ゆうじょ)(許すこと)した場合には、過去の不貞を理由に有責配偶者であると主張することは信義則上許されない」として、妻からの離婚請求を認めました。

 

この判例は、不倫した妻をいったん夫が許したものの、その後に妻から離婚を請求しました。その際、夫は「不倫していた妻は有責配偶者」だと主張をしたが、夫自身が一度許していたので有責配偶者ではないと判断し、夫の主張を退けたのです。

 

宥恕(ゆうじょ)とは

一般的に、罪を許すことを言います。
離婚事件などにおいて、一度宥恕(ゆうじょ)したことは、基本的に法律判断の材料とはできないのです。

 

結論

この判例から、一度相手の不貞を許した場合、その後に離婚や慰謝料の争いが起こっても、過去の不貞は材料視できないということが分かります。

 

この事例では、夫A氏は妻Bさんに謝罪し、高級レストランに連れて行ったりやブランドバックを買い与えたりして、妻Bさんは夫A氏を完全に許しました。そのため、妻Bさんは、一度許した不倫を理由として離婚請求を起こしても、離婚成立も慰謝料請求も認められないでしょう。

 

この場合、妻Bさんは、夫を許すかどうかを、もう少し時間をかけて判断すべきだったのです。

 

一度不倫を許すと、それを理由としての離婚や慰謝料は認められない!