20歳で養育費を止められたら困る

  • 夫A氏

    50代前半の会社員。

  • 妻Bさん

    40歳後半で派遣社員。

  • 子どもは息子C君(相談者)

    春から大学1年生。

 

やった!
第一希望だった大学に合格した!

 

 

俺は、卒業間近の高校3年生。
この1年間、大学受験のために勉強漬けだった。
その甲斐があって、第一希望の地元の国立大学に合格できた。

 

 

合格を知ったときは、素直にうれしかった。
そして、喜ぶと同時に、母の喜ぶ姿が浮かんだ。

 

 


「母さん!
○○大学に合格したよ!」

 

 

母からは、すぐに返事が来た。

 

 

母Bさん
「おめでとう!
母さんもうれしい!
お父さんにも大学合格を報告した?」

 

 

俺は母親と二人暮らしだ。
俺の両親は、俺が物心つく頃には既に離婚していたからだ。

 

 

正直、父親がいないことで幼い頃は寂しい想いをした。
だが、母親は俺のことをとても気使ってくれた。

 

 

俺が両親の離婚に悩まないように、何かある度に父親の写真を見せるなどしてくれていた。

 

 

ただ、父親との面会交流はほとんどしたことがない。
父は仕事がとても忙しいらしい。
また、既に再婚して新しい家庭がある。
別れた元妻の子である俺に会う機会は、年に1回あるかどうかだ。

 

 

だが、離れて暮らしているとはいえ、実の父親だ。
大学合格という大イベントを終えたのだから、結果は報告しなけれれば。

 

 

父も母も4年制大学を卒業しており、父は俺の大学入学を喜んでくれるだろう。
昨年、父に『第一希望は○○大学』と言うと、『応援してるぞ』と言ってくれた。

 

 


「お父さん、久しぶりです。
無事に、○○大学に合格しました。
春から○大生になります!」

 

 

父さんから返事は来るかな?
ドキドキ。ドキドキ。

 

 

父からの返事はすぐに来た。

 

 

父親A氏
「○○大学合格、おめでとう!
よく頑張ったな。
養育費払ってるんだから、大学生になってもきちんと勉強しろよ!」

 

 

お父さんが褒めてくれた。
俺の心はほっこりした。

 

 

その夜、俺は父親からの返事を母に見せた。
すると、母親の表情が段々と暗くなっていった。

 

 

母親
「養育費ね。
そういえば、離婚時に養育費の支払いは『成人するまで』って決めたけど、どうなるんだろ?」

 

「順調に大学を卒業すると22歳よね?
養育費を成人の20歳で止められてら、2年間お金に困るわね。
大学の授業料などで出費が増えるのに、20歳で養育費が止まったら完全に赤字よ」

 

 

なんということだ。
大学に合格することで浮かれていた。

 

 

だが、いざ大学に通うためには授業料などお金が必要だ。
今まで、お金の問題なんて考えたことも無かった。

 

 

大学での教科書代は、高校時代とは比べ物にならないらしい。
専門書を買うことになるので、1冊2,000〜3,000円とかする。

 

 

さらに、サークルとは飲み会などで交際費もかかるだろう。
もし彼女ができたら、会うたびにどこかに連れて行かなきゃいけない。

 

 

もちろん、アルバイトをすることは考えている。
だが、授業が忙しければ、思ったように働けないだろう。
安定的な収入として期待するのは危険だ。

 

 

奨学金制度があるらしいが、それにかけるのも危険だ。
もし申請が通らなかったら大変だ。

 

 

やはり、父親にお願いするしかない。
なんとか養育費を22歳の大学卒業まで払ってもらいたい。

 

 

だが、父は承諾してくれるだろうか。
離婚時に『養育費は成人まで』と決めたからには、その期限を延ばすなんて簡単ではないだろう。

 

 

もし養育費が止まったら、卒業前に退学しなければならない。
せっかく〇〇大学に合格したのに…。

 

 

困った。
困ったぞ。

 

 

こうなったら、弁護士に相談してみよう。
こんな時、どうすれば良いかアドバイスくれるはずだ。

この事例の争点

C君は、日々の努力が実って第一希望の○○大学に合格しました。
だが、合格して喜んだものの、養育費の支払いがいつまで続くのかという問題に直面しました。

 

 

今、離れて暮らす父からは毎月養育費が支払われています。
だが、両親の離婚時の取り決めで『養育費は成人するまで』と合意済みです。

 

 

順調に行っても大学卒業は22歳です。
成人する20歳で養育費を止められてしまったら、その後の2年間はどうなるのか。
授業が忙しくてバイトできなかったり、奨学金の申請が通らなかったらアウトです。

 

 

こうなったら、離れて暮らす父親にお願いするしかありません。なんとか。養育費の支払い期限を大学卒業までにしてもらうのです。

 

 

しかし、父が養育費の支払い期限を22歳まで伸ばすことを拒否したら?
元々、成人の20歳までと言っていたので伸ばすことに反対するかもしれません。

 

 

C君としては、なんとしても○○大学を卒業したいと考えています。

 

 

そのため、もし養育費の支払い延長を求めて裁判を起こしたら、22歳までの支払いが認められる可能性はあるのでしょうか。

 

では、この事例に似た過去の判例を紹介します。

 

判例の紹介

判例@

大阪高等裁判所

平成2年8月7日

家裁月報43巻1号119項

医師の父と薬剤師の母は、離婚している。娘2人が、父に対して養育費(扶養料)の支払いを求めた。

 

大阪高裁は、子どもたちが育ってきた家庭環境・教育環境・経済状況などを考慮して、次の様に養育費支払いの期限を延ばした。

 

・既に大学生だった長女は、4年制大学を卒業する年齢まで
・次女は、高校卒業後に就職した場合は高校卒業の年齢までで、短大に進学した場合は短大卒業の年齢まで

 

判例A

東京高等裁判所

平成12年12月5日

家裁月報53巻5号187項

4年制大学に通う成人した息子が、父に対して養育費(扶養料)を請求した。

 

子は、高校卒業後にそれまで養育されてきた母の元を離れて大学に進学し、父母の扶養(経済的支援)を受けて生活・勉学してきた。しかし、成人したタイミングで父が養育費の支払いを止めてしまった。

 

東京高裁は、子どもが成人に達して健康であることをもって、直ちにその子への養育が必要ないと判断することは相当ではない、として大学卒業までの養育費(扶養料)の支払いを認めた。

 

結論

現在、高校卒業生の約50%が4年制大学に進学しています。このことは、20歳を超えても約半分の子どもは親からの学費・生活費といった経済支援を必要としていることを表しています。

 

 

そのため、両親が離婚している子どもが大学進学を迎える頃には、多くの家庭で『養育費はいつまで支払いが続くのか』という問題が発生します。しかも、大学生活を送るために必要な金額は年間数十〜百万円台といった高額になることから、養育費の重要度はかなり高くなります。(奨学金という方法もありますが)

 

 

ただ、過去の判例を見る限り、例え離婚時に『養育費は成人になるまで』と合意していても、子どもが既に大学に進学済みの場合は、大学卒業の年齢まで養育費(扶養料)の支払いが認められています。

 

 

さらに、大学に進学する前でも、(両親の学歴や教育環境から)高校卒業後に大学に進学する可能性が十分ある場合には、大学卒業までの支払いが認められています。

 

この事例だと、子どもはすでに大学に合格済みです。しかも、両親も大学卒業しているので、当然子どもが大学に進学することは想定内だったと考えられるでしょう。

 

 

大学合格の時点で4年間の大学生活を送ることは確定しています。そのため、大学卒業の22歳までは経済的自立は望めず、両親に経済的支援を頼る必要があります。

 

この事例では、過去の判例のとおり、大学卒業に達する年齢までは養育費(扶養料)の支払いが認められるでしょう。例え両親の離婚時の合意内容に『養育費は成人に達する年齢まで』となっていても、過去の判例と同じように大学卒業までの支払いが認められるでしょう。

 

養育費の支払い期限は、大学卒業まで認められる可能性が高い!

ただし、両親の教育水準や家庭環境などにもよる。