婚姻費用の相談事例!妻は働けるのでは?

家族構成

イラスト_男性50代

 

 

夫A氏(50代)
会社員

 

イラスト_女性40代

 

(相談者)
妻Bさん(50代)
専業主婦

 

イラスト_成人女性

 

23歳(長女)
社会人

 

妻Bさんは、今まさに別居を始めようとしていた。

 

 

不倫や暴力などの決定的な原因は無い。
かといって、精神的暴力(モラハラ)などでもない。

 

 

夫とは、22年前にできちゃった婚で入籍した。
妻Bさんは入籍直後に娘を出産し、大学を卒業するまで22年間、家事と育児とパート勤務をしていた。その間はほとんど自分の時間を全く持てなかった。

 

 

その期間、夫が優しければ妻Bさんに不満は無かった。
しかし、亭主関白で潔癖症な夫は、何かある度に妻Bさんに当たってきた。
そのため、妻Bさんは常に息苦しさを感じていた。

 

 

そんな妻Bさんは、子どもが大学卒業して家を出たことをきっかけに、別居を考え始めていた。

 

 

子育ては一区切りついた。
残された人生は、一人で生きていきたい。

 

 

妻Bさんは、満を持して夫に別居したいと切り出した。

 

 

当初、夫は別居に大反対した。
妻がいなくなるなんてショックだ。
寂しいだけでなく、家事を自分一人でしなければならない。

 

 

しかし、妻は別居をほぼ決断していて、とても止められそうにない。
結局、決定的な喧嘩となってしまうよりも一度頭を冷やした方が良いと判断して、夫は渋々妻の別居を認めた。

 

 

妻Bさんは、80代の両親が住む実家に帰った。
大好きな両親と過ごしたいという気持ちもあったのだ。

 

 

妻Bさんが実家に帰ると、生活費の問題に直面した。
最初は、両親の世話をする代わりに、両親の年金の一部に頼って生活するつもりだった。
だが、想定以上に出費が多くなることが分かった。

 

 

そんな時、友人との会話で婚姻費用制度というものを知った。
別居すると、収入の高い側(夫)は低い側(妻)に生活費を支払わなければならないという制度だ。
その金額は、お互いの年収、未成年の子どもの数・年齢から決まるのだ。

 

 

妻Bさんは、婚姻費用がいくらくらいもらえそうなのか計算してみた。

 

婚姻費用についての妻Bさんの主張
  • 夫の年収は、650万円
  • 妻の年収は、専業主婦なので無し
  • 子どもは既に一人暮らし

 

これらの前提条件から、婚姻費用は毎月10〜12万円となりそうだ。
毎月10万円もあれば、妻Bさんは無理せず生活が送れそうだと感じた。

 

 

夫に婚姻費用として10万円を請求した。
すると、夫から電話がかかってきた。

 

 

夫は、婚姻費用を支払うことには納得している様だ。法律で決められていることなので、さすがに支払わないわけにはいかない。

 

 

ただ、夫はその金額を算出する前提に納得していなかった。

 

 


「お前、働けるだろ?
それなのに、年収をゼロとして計算するのはおかしいだろ?」

 

 

妻Bさんは、いたって健康だ。
持病などもなく、他の同世代と同様に働くことは可能だ。
また、養育している子どももいないので、時間的余裕もある。

 

 

夫は、妻Bさんが働けるのにも関わらず年収をゼロとして婚姻費用を計算していることに納得できなかった。基本的には前年度の年収を参考にするとしても、さすがにこれはおかしいと思った。

 

 

夫の主張は、妻の年収を約200万円として計算すべきという。
時給1000円で1日8時間、週5回働くことを前提としている。

 

婚姻費用についての夫の主張
  • 夫の年収は、650万円
  • 妻の年収は、年200万円程度可能
  • 子どもは既に一人暮らし

 

この条件だと、婚姻費用は6〜8万円。
妻Bさんの主張よりも4万円程度少なくなります。

 

 

夫は、婚姻費用は支払う気ではあった。だが、自らは働こうとせずに、夫からの婚姻費用で暮らそうとする妻の考えが許せなかった。

 

 

一方、納得いかないのは妻Bさんだ。
想定していたよりも4万円も少なくなるなんて、到底受け入れられない。

 

 

夫の提示した金額に納得いかない妻Bさんは、翌日弁護士に相談しに行きました。

この事例の争点

この事案の争点は、婚姻費用を計算するにあたって、現在無職の妻Bさんの年収をゼロとして計算するのは妥当かどうかという点です。

 

 

妻Bさんとしては、年収がゼロとして計算した方が婚姻費用は高くできるので有利です。
前年度の年収を基準にするのが基本なので、専業主婦として年収ゼロが基準とすべきだと主張しています。

 

 

一方、夫としては、妻Bさんの年収を少しでも高く設定できれば婚姻費用の負担は軽くなります。
夫の主張としては、子どもは独立していて世話をしなくて良いので、働けるのに働かずに年収をゼロとするのはおかしいと考えています。

 

※表

 

夫と別居中の妻Bさんとしては、婚姻費用が毎月いくらになるのかで、生活の安定度に大きく影響します。家賃や食費などにかけられる金額も変わってきます。

 

 

この場合、婚姻費用を定めるための妻の年収はどうなるのでしょうか。

 

 

では、この事例と似た過去の判例を紹介します。

 

判例の紹介

判例@

東京高裁

平成15年12月26日決定

家裁月報56巻6号149頁

婚姻費用計算において、無職の妻(54歳)の年収を理論的に導かれた統計資料(賃金センサス)を元にして、同じくらいの年齢の短時間労働者の収入程度(年間128万円)を推計した。

 

判例A

大阪高裁

平成5年4月15日決定

未公表

子どもが成人している無職の妻(50代)の年収設定を、無職ではなくパート勤務者程度の稼働能力はあるとした。想定の年収は、住居地の最低時給で1日6時間、月20日働いたとして推計した。

 

結論

過去の判例によると、働けるのに働いていない場合は、婚姻費用計算において年収をゼロとはしていません。健康であり養育すべき子どもがいない(もしくは独立して生計を立てている)場合、当事者は当然働けると判断されたのです。

 

 

働くことが可能な場合、その年収の設定の仕方が問題となります。その際、判例@では、賃金センサスから該当する条件の年収を設定しており、判例Aでは合理的に推計された年収を設定し、それを基に婚姻費用を計算しています。

 

 

したがって、この事例では、婚姻費用を計算する際に、妻は十分働ける状態であるので年収をゼロとして婚姻費用計算することは認められないでしょう。

 

まとめ

養育する子どもがいなくて健康な場合、婚姻費用を計算する際に年収をゼロとしない!(推測される年収を前提とする)

 

※ただし、幼い子供を育てているなどきちんとした事情があるなら、年収をゼロとすることが認められた判例があります。
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