婚姻費用の相談事例

家族構成

イラスト_男性40代

 

 

夫A氏(30代)
会社員

 

 

イラスト_女性30代

 

相談者 ※別居中
妻Bさん(30代)
専業主婦

 

イラスト_女の子

※母と同居
5歳(長女)
幼稚園児

 

イラスト_赤ちゃん

※母と同居
1歳(次女)
幼稚園児

 

イラスト_赤ちゃん

※母と同居
1歳(三女)

 

 

 

夫とは、同じ会社の同期だった。

 

 

入社当時から仲が良く、入社して半年後には交際を始めていた。
交際を初めて5年後、私たちは結婚式を挙げた。
結婚式は、会社の上司・同僚を呼んで盛大に執り行った。

 

 

しばらくして私の妊娠が発覚した。
結婚を期に寿退社した。

 

 

専業主婦となっていたことで、私は出産・育児に専念できた。
その間、夫は熱心に支えてくれていた。
その甲斐もあり、カワイイ長女を授かった。

 

 

そして、4年後。
1人目の育児にも慣れてきた頃、双子を妊娠していることが発覚。
瞬く間に、3人の子どもに囲まれた幸せな家庭となった。

 

 

だが、ある日、仕事から帰宅した夫からとんでもないことを打ち明けられた。

 

 

私が双子を妊娠中、夫は不倫をしていたという。
不倫相手は、夫が同僚とバーで飲んでいた時に出会った女性らしい。
そして、不倫だけならまだしも、不倫相手を妊娠させてしまったというのだ。

 

 

不倫相手は、夫が結婚しているとは思ってなかったらしい。
夫が既婚者だと告げると、慰謝料を請求すると言っているそうだ。
もちろん、生むわけにはいかないので中絶するが、その費用は夫に請求するという。

 

 

夫の説明を始めても、私は意味が理解できなかった。
夫が話終わったころには、もう心がここに無かった…。

 

 

私は3人育児をして、ここ数年間は休みの日などない。
子どもの夜泣きのせいで夜は3時間毎に起こされ、まともに寝た日などない。
ましてや、自由な時間なんて…。

 

 

そんな私を顧みず、夫は不倫をしていた。
育児で大変な私を気遣うことなく、コソコソと夜遊びしていたのだ。
そして、自分の欲望を満たすために相手を妊娠までさせていたのだ。

 

 

夫から話を聞いた翌日、妻Bさんできるだけ考えないようにしていた。
しかしその日以降、夫を見るのが段々と嫌になってきた。
気持ち悪い存在としか思えなくなった。
夫の顔を見るだけで動悸がするようになった。

 

女性モデル10_悲しい38

 

夫が不倫を打ち明けてから1か月後、私は3人の子どもを連れて実家に帰った。
もちろん、夫には実家に帰るとは事前相談などしていない。
夫が仕事に行っている間に、荷物をまとめて引っ越し業者を呼んで、自分と子どもたちの荷物を運び出したのだ。

 

 

実家に着いて両親に話すと、父は別居に反対だった。
それどころか、『不倫の一度くらい許してやれ』と言っていた。
だが、そんな父に対して母が必死に説得してくれた。

 

 

仕事から帰宅した夫はびっくりしたかもしれない。
家にいるはずの妻と子どもたちが、荷物と共にいなくなっているのだ。
だが、これ以上一緒にいたら私が壊れてしまっていただろう。

 

 

私は、夫A氏のいる家にいつか戻るかは分からない。
このまま離婚してしまうかもしれない。

 

 

今は夫の顔を見るだけで吐き気がする。
できれば二度と顔も見たくない。

 

 

しかし、子どもたちはどう思うだろう。
急に父親と離れ離れになって寂しいかもしれない。

 

 

離婚するか、復縁するか。
別居しながらじっくり考えるつもりだ。

 

女性モデル10_悲しい33

 

翌日、弁護士に相談に行った。
最初の30分は無料相談らしいので気軽に行けた。

 

 

弁護士に相談すると、私の思いをとてもよく理解を示してくれた。
世の中、妻が妊娠中に不倫する夫は多いらしい。
そして不倫がバレると、多くの夫婦は離婚に至るそうだ。

 

 

相談の最後に、弁護士は夫への婚姻費用の請求を勧めてきた。
例え別居していても、夫とは婚姻中であることには変わりない。
その場合、妻は収入の高い側(夫)から婚姻費用を受け取る権利があるという。

 

 

実家にいると家賃はかからない。
だが、私と子ども3人分の食費や光熱費がかかる。

 

 

子どもたちは育ち盛りで食費が高くつく。
また、成長が早いので、新しい服もどんどん必要だ。
そのため、夫にはしっかりと婚姻費用を支払ってもらうつもりだ。

 

 

婚姻費用は、妻と子どもの生活費を想定している。
一方、養育費は子どもだけの生活費を想定している。
もし離婚すると妻への生活費は必要ないので、その分金額が下がるのだ。

 

 

私は、婚姻費用がいくらになりそうか調べた。
ついでに、離婚した場合の養育費がいくらになりそうかも調べた。

 

 

婚姻費用と養育費は、算定表から簡単に算出できる。
夫婦双方の前年度の年収と、子どもの数・年齢を基にして計算するのだ。

 

  • 夫の前年度の年収は、750万円。
  • 私(妻)の前年度の年収は、専業主婦のため無し。
  • 子どもは、1歳3歳4歳の3人。

 

算定表を使うと、婚姻費用と養育費はすぐに算出できた。

 

私(妻)の主張
  • 婚姻費用は16〜18万円(別居中)
  • 養育費は14〜16万円(離婚後)

 

これだけあれば、当面生活はやっていける。

 

 

さっそく夫に婚姻費用を請求した。
夫の不倫が原因なので、すぐ認めるだろうと思っていた。

 

 

翌日、夫からラインが来た。
夫は、婚姻費用を払うことには了承した。
しかし、その金額の設定方法が気に入らないらしい。

 

 

夫は、婚姻費用計算する際に私の年収を無しとするのが納得いかないようだ。

 

 

夫は、「妻である私は働こうと思ったら、子どもを両親に預けて働ける」と言ってきた。
したがって、年収はゼロと設定するのではなく、パートで働くことを前提とした年収を設定すべきだと主張している。

 

 

もしパートを始めて、時給1,000円・8時間勤務・週5日という条件で働くとすると、私の年収は約200万円になる計算だ。

 

 

それを前提にすると、算定表から婚姻費用と養育費は夫の主張は次の通りとなった。

 

夫の主張
  • 婚姻費用は14〜16万円(別居中)
  • 養育費は10〜12万円(離婚後)

 

ここで、夫と私(妻)のそれぞれの主張をテーブルにまとめてみた。

 

<主張の組み合わせによる婚姻費用>
夫の主張 私(妻)の主張
婚姻費用 14〜16万円 16〜18万円
養育費 10〜12万円 14〜16万円

※左記(夫の主張)では、私(妻)の年収は約200万円前提。
※右記(私の主張)では、私(妻)の年収は無し前提。

 

 

夫の主張だと、婚姻費用は年収ゼロの前提より約2万円低い。
養育費だと約4万円も低い。

 

 

当初、私が想定していた金額と離れている。
そうは言っても、両親に子ども3人預けてパートで働くなどまず不可能だ。

 

 

夫の無理のある主張に、私は頭を悩ませている。
まったく現状を理解していない!
子育てがどれだけ大変か!

 

 

私は、なんて男と結婚してしまったのだ!

 

女性モデル10_悲しい35

この事例の要点

この事例では、婚姻費用を設定する際に妻Bさんが働くのが難しいと判断して年収はゼロとするのか、パートなどで働ける前提での年収を設定するのかが焦点です。

 

まず、両親に預ければ良いというのは、夫の都合でしかありません。臨時的に頼るのは仕方ないですが、基本は妻Bさんが責任を持って養育するのが当然です。

 

 

そして3人の幼児を世話している妻Bさんが働く事は、実質的には非常に難しいです。
1歳児はまだ母乳が欠かせませんし、3歳と4歳児も、熱が出たり風邪をひいたりするか分かりません。母親としていつ保育園に呼ばれるか分からない状況では、それを理解した上で雇ってくれる職場は限られるでしょう。

 

 

そもそも、3人同時に同じ保育園、もしくは別々でも離れていない距離の保育園に同時に受け入れられるのは現実的ではありません。一人でも待機児童となれば、働きに出るのは不可能です。

 

 

では、この事例に似た過去の判例を紹介します。

 

女性モデル08_笑顔20

判例の紹介

 

判例@

大阪高裁

平成20年10月8日決定

家裁月報61巻4号98頁

別居後、妻が養育する2人の子どもは幼稚園と保育園に通っていた。

 

大阪高裁は、
・子どもの幼稚園・保育園への送迎がある
・病気・事故などの予測できない事態が発生する可能性がある
・そのため、就職のための時間的余裕は確保されていない
として、婚姻費用計算のための妻の収入をゼロとした。

 

判例A

熊本家裁

昭和53年2月20日決定

家裁月報31巻2号142頁

妻は教員・美容師・電話交換手などの免許を持っていたが、結婚後は主婦として家事育児に専念していた。

 

夫と別居後には幼稚園と小学校の子どもを養育していたため、実質的に働くことは不可能と判断して婚姻費用計算での年収を無職のゼロと設定した。

 

結論

現実的に、子どもを持つ母親が仕事をすることは非常に難しいです。

 

 

共働き夫婦が保育園に子どもを預けて夫婦で仕事をしている家庭もありますが、それは夫の助けがあって成り立っています。別居状態では相手のサポートが期待できないので、仕事と育児の両立は非常に難しいのが現実です。子どもが2人以上になるとなおさらです。

 

 

過去の判例では、母親が実質的に働くことは難しいと判断され、婚姻費用や養育費を計算する際の母親の年収はゼロとなりました。

 

 

保育園不足の慢性化、認可外保育園の費用が高額であることや、幼児期は幼児を家庭で育てるのが多いという現実があります。したがって、幼い子どもを持つ親の年収推計の際は、そういった現状が考慮されていると考えられるでしょう。

 

まとめ

婚姻費用や養育費の計算で、幼い子どもを持つ母親の年収はゼロとなる!