夫が1億円を相続した!

  • 夫A氏

    40代後半の会社員。

  • 妻Bさん(相談者)

    40代前半で専業主婦。

  • 子どもは2人

    両方息子で、大学4年生と大学2年生。

 

団塊ジュニア世代。

 

 

それは、戦後の第2次ベビーブームに生まれた人々。
おおむね1970年代に生まれ、先進国となりつつあった日本を担う者と期待されて育った。

 

 

だが、1学年200万人もの団塊の世代を受け入れる社会は整っていなかった。
1990年代の受験戦争は熾烈を極めた。
大学卒業時は、まだバブル崩壊の爪痕は深く、就職氷河期と言われる時代を迎えていた。

 

 

2000年代になっても団塊ジュニアの不遇は終わらない。
アジア通貨危機や長引く不況で裕福とは程遠い生活を送る。
一つ上の世代がバブルを謳歌したのとは違い、華やかな時代を知らずに生きてきた。

 

 

もちろん、それ以降の小泉景気やアベノミクスで、今までの苦労が報われる者も出てきた。だが、それはある程度資産を持っていた者がさらに増やしただけで、庶民にとっては別世界の出来事だった。

 

 

そして、東京オリンピックから始まる2020年代。
団塊ジュニア世代には、大きな額の資産が入ってこようとしている。

 

 

それは、遺産相続である。

 

 

親の世代の第1次ベビーブームはもう70代。
そろそろ、寿命を迎える者がちらほら出てくる。

 

 

団塊世代のほとんどは住宅ローンは残っていない。
したがって、土地・建物がそのまま遺産となる。
さたに、彼らの中には戦後の高成長でうまく資産を増やした者もいる。

 

 

 

夫Aさんは、一足先に団塊の世代の遺産を相続したのだった。
その資産額は、なんと1億円。

 

 

両親が住んでいた都内の住宅と、父親が偶然持っていた株価がたまたま大きく値上がりしたのだった。

 

 

普段は、会社からの給料手取り35万円で生活する毎日。
1億円を相続したものの、どうすれば良いかわからなかった。
また、何かあった時のために、一切手を付けずにいようとしていた。

 

 

だが、それに不満を持った人がいた。
A氏の妻Bさんだ。

 

 

夫A氏と妻Bさんは、それぞれ20代半ばの時に結婚した。
だが、まだ20代の夫婦は贅沢とは程遠い生活だった。

 

 

住居は、築古木造アパート。
食事は、常に家庭料理で外食は3ヶ月に1度。

 

 

30歳になっても不景気で給料は上がらない。
40代になってやっと給料が上がってきた頃には、息子2人は大学生で学費の支払いで精いっぱい。

 

 

ずっと、贅沢に縁が無かった。
旅行にも、数年に1度の国内旅行するくらい。
ヴィトンやグッチといったブランド物なんて、触れたこともない。

 

 

夫に遺産1億円が入ったと聞いた時、妻Bさんは喜んだ。

 

 

これで、多少はゆとりができる。

 

 

20年乗っている古い車を買い替えられる。
都会のデパートでキレイな服を買ってもらえるかもしれない。
初めてヨーロッパなどの海外旅行に行けるかもしれない。

 

 

今まで苦労した分、多少の贅沢は許されると思っていた。
いままで抑えていた希望がかなうかもしれないのだ。

 

 

だが、夫は遺産を使おうとはしなかった。
夫にとって、今までの節約生活で見た世界が全てなのだ。

 

 

ヨーロッパとかの海外は、別の世界と割り切っている。
ブランド物も欲しいと思ったことすらない。

 

 

1億円持っているとはいえ、使ってみようという考えにはなれなかった。

 

 

妻Bさんは、期待していた分、気持ちはとても落ち込んだ。
今まで苦労してきたから、少しくらいいいじゃないか。

 

 

必死で夫を説得してみた。
今まで贅沢しなかった分、一度くらい人生を楽しませて欲しい。
一度くらいテレビや雑誌でしか見たことがない世界を見てみたい。

 

 

だが、夫A氏は首を縦に振ることはなかった。
そして夫は、「そんなこと言う女なんかいらない」とも言ったのだ。

 

 

夫の言葉を聞いて、妻Bさんは涙が浮かんだ。
深い心の傷ができたのだった。

 

 

 

翌日の昼、妻Bさんは弁護士事務所にいた。
昨晩、夫に離婚をほのめかされたので、夫が仕事でいないうちに相談に来たのだ。

 

 

妻Bさんは、離婚する場合について話した。

 

 

今までは、我慢して節約生活をしてきた。
それなのに、1億円もの遺産を得た夫は、その費用を少しも使おうとしない。

 

 

貯金することは大切だと思う。
だが、共に苦労した妻に少しは使ってもいいのではないか。

 

 

そして、妻Bさんは続けた。

 

 

今、夫は1億円持っている。
したがって、今別れたら半分の5,000万円は貰えるのではないか。
そうなれば、夢だったフランスやスペインに行くこともできる。

 

 

一般的に、離婚を話す人は、追い詰められた顔をしている。
どんなに元気なふりをしても、覇気は無い。

 

 

だが、妻Bさんの顔は、希望に満ちていた。
お金さえもらえれば、夫と別れても良いと思いはじめていた。

 

 

果たして、妻Bさんは離婚すると夫ん資産1億円の半分を得ることはできるのだろうか。

この事例の争点

夫A氏は、遺産により1億円という大金を得ました。

 

 

それを知った妻Bさんは、少しくらいは使いたいと考えました。
もちろん、全部を使い切るというわけではなく、少しだけでも使って海外旅行に行きたいと考えました。

 

 

しかし、夫は遺産をいっさい使おうとしませんでした。
今まで、海外旅行やブランドなどを欲しいと思ったことがなく、そのためにお金を使おうという考えが理解できなかったのです。

 

 

さらに、しつこく旅行をねだる妻に対して、「そんな女はいらない」と発言しました。
それを聞いた妻Bさんは、離婚して半分の5,000万円を手に入れることができないかと考えました。

 

 

この場合、夫の得た遺産のいくらかは、妻Bさんの物となるでしょうか?

 

結論

原則として、離婚時に財産分与の対象となるのは、夫婦で協力して形成した財産に限られます。この財産分与対象となる資産は、共有財産と言います。

 

 

そのため、独身時代に貯めた貯金や相続での遺産は、夫婦で協力して形成した財産ではないため財産分与の対象にはなりません。このような、財産分与の対象にならない個人の財産を特有財産と言います。

 

 

ただし、例外はあります。例えば、生活費のとして毎月数万円ずつお金が援助されていた場合は、夫婦に対しての援助(贈与)だと捉えられます。このようなケースでは、共有財産と判断されることもあるでしょう。

 

遺産は特有財産なので財産分与の対象外

この事例では、夫A氏は親からの遺産として1億円を相続しました。もし裁判となったら妻Bさんの主張は認められません。夫A氏の1億円は相続で得たものなので特有財産となり、財産分与の対象なりません。

 

 

ただし夫A氏は、妻Bさんが財産の分与を主張をしてきても、通帳の推移や相続の記録を見せることで遺産の1億円は守ることができます。

 

親からの相続した遺産は特有財産であり、財産分与の対象とはならない!